知的障害を字義どおりに捉えれば、日常生活において
頭脳を使う知的行動に障害があることを指すものといえます。
例えば、読み書きや計算、金銭管理といった
行動において問題があるということであり
この視点からいえば、知的障害の範疇は
非常に広いものであると考えられます。
つまり、広義に捉えれば、認知症、高次脳機能障害、学習障害
なども含むこととなります。
しかし、一般に福祉や教育の領域において
「知的障害」という場合は狭義のものをいいます。
狭義の知的障害の定義については
1960(昭和35年)4月1日に施行された
知的障害者福祉法(旧「精神薄弱者福祉法」)には
身体障碍者福祉法に規定されているような
障害の定義は存在しません。
今日まで福祉施策や学校教育においては
知的障害につて定義する法令はありますが
個々の法令においてその定義は
異なっているのが現状です。
厚生労働省は2000(平成12)年に知的障害者の
実態調査を実施するために
客観的基準として、知的障害とは発達期(おおむね18歳まで)に
明らかな遅滞が現れ、その遅滞により適応行動が困難ななめに
日常生活に支障が生じ、なんらかの特別の
援助を必要とする状態にあるもの、と3つの要件から
知的障害を規定しました。
また、遅滞の判断については、
標準化された知能検査
田中ビネー、WAIS-R、KーABC などによって
測定された知能指数が、70~75未満のものと規定しています。
このような厚生労働省の客観的基準は
1992年に定められたアメリカ精神遅滞学会(AAMR)
の定義に基づいています。
AAMRでは知的障害の状態を
① 知的機能が平均以下(IQ 70~75以下)であること
② 適応スキルの領域のうち、2つ以上の領域で制約があること
適応スキル:a)コミュニケーション b)身辺処理
c)家庭生活 d)社会的スキル
e)コミュニティ資源の活用
f)自律性 g)健康と安全
h)実用的学業 i)余暇 j)労働
③発症年齢が18歳以下
の3項目で定義しており、特徴的なのは知的障害を
機能の状態としてとらえようとしている点であり
適応行動が機能的に制限されている状態としています。
言い換えれば、知的障害は固有の状態像を示す言葉ではなく
一人ひとりによって違いがあると同時に
個人においても、環境的条件によって可変的な
可能性をもっている存在あると捉えています。
知的障害の原因はさまざまであり、特定できないものも
少なくありません。なかには原因が一つとは限らず
いくつかの因子が複雑に関係して
発症する可能性も考えられます。また、遺伝や染色体異常など
先天性の障害だけでなく、損傷や環境が
原因とされる後天性の障害も注目されています。
「日本医療企画」テキストより
